青春

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Mar 21st 2012 12:29
「もしもし?」

「僕だ」

 考えてみれば、女の子に電話するのはそれが初めてだった。

「あっ、こんばんは。どうしたの?」

「ちょっと確認したいことがあるんで」

 もともと電話はあまり好きではなかった。女の子と話すのも苦手。

「はい?」

「この前のパーティでレイシーが他の男と一緒にいたって噂を聞いてるけど?」

 でも僕は冷静だった。それは僕が第三者だったからだろう。

「…あなたには関係ないでしょ」

「確かに」

「お願い、ニックには何も言わないで!あたしが説明するから」

「ってことは、否定しないんすか。わかった。さよなら」

 僕がレイシーに最後に言った言葉は、そんな感じだった。僕は白黒画面のモトローラを閉じてダッシュボードの上に置き、ため息をつきながら助手席に沈み込んだ。その頃はまだ、カラー画面の携帯も普及していない時代だった。運転席に座るニックは、インパネの灯りによって微かに照らされていた。青い表示が、血の気の無い彼の顔をさらに真っ青にさせていた。

「悪いな、面倒なこと頼んじまって。お前の友達でもあるし」

「これで『あった』ってことになるだろうけどな。それより、お前大丈夫か?」

「ちょっと飲みたい気分かな」

「じゃあ、交代するか」

 渡されたフォルクスワーゲン・ニュービートルのキーケースは、ボタンを押すと鍵の部分が飛び出しナイフみたいに回転して出てくる仕組みになっている。そのカチャッという音がカッコ良くてたまらなかったが、凹んでいるニックの前ではしゃぐわけにも行かず、ワクワクする気持ちを抑えながら僕は運転席に座ってイグニッションキーを回し、エンジンをかけた。

 しばらくドライブしていると、ニックの携帯が鳴り出した。

「もっと早く電話してくるかと思ったよ」

 レイシーの怒鳴り声が携帯から漏れていた。

「まあまあ、そう言わずに。彼は何も悪くないし、隣にいるから聞こえちゃうよ。って、そんなことよりもっと言うべきことあるだろ」

 電話の向こうの声は切羽詰まった様子だった。でも、それは彼女の言った通り、僕には関係のない話だった。僕は運転に集中していた。考えてみれば、自分の車以外の車を運転するのはそれが初めてだった。当時は売り切ればかりでなかなか手に入らない車だったので、それを誕生日プレゼントにもらったニックは学校で人気者になった。「乗せてくれ」と言ってくる男の子もいれば、「携番教えて」と言ってくる女の子もいた。レイシーはその一人だった。高校生とはそういうものだ。それでも、助手席にはいつも僕がいた。