日本語の読点の打ち方について

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May 31, 2013 16:12
日本語の読点の打ち方について
ショウロ
1、問題の所在
私たちが文章を書く際、区切り符号の中で最も使われているのは読点に違いない。読点は息継ぎをするタイミングでつけ、文章をよりわかりやすくする。中川健次郎は「読点とは、点・テンと呼ばれ、コンマにあたる。文中に「、」の符号で示され、ことばの切れ続きを明らかにするものである。」(中川1980)と述べている。
しかし、明治初期までは、日本の文章には句読点が全くなかった。明治39年(1906)に、文部省大臣官房調査課草案の句読法(案)が作られ、「、」「。」が登場した。また、この句読法(案)を骨子として、昭和21年に文部省教科書局国語調査室が、くぎり符号の使い方「句読法」(案)を作った。この中で、読点を使う13の原則が書かれている。しかし、これはあくまでも案であり、決まりではない。では、実際に、読点はどのように使われているのか。私たちは読点を使う時、何かルールがあるのか。読点の打ち方を明らかにするために、この研究を行うものである。

2.目的と方法
本稿では、質的調査の内省と量的調査のアンケート調査を用い、文章の「環境ホルモン あわてず打つ手は素早く」(『朝日新聞』1998年4月24日朝刊社説)に実際に読点を打つことから、読点の打ち方のルールをまとめる。
まず、筆者自身が日頃積み重ねた読点の打ち方に関する知識を利用し、その文章に読点を打つ。そこで、実際に読点を打ったところにその理由を絞り出し、読点の打ち方に関する仮説を立てる。
次に、筆者が内省してからまとめた仮説を、早稲田大学173名の大学生を対象にした行ったアンケート調査の結果と検証または修正する。
最後に、日本語の読点の打ち方についてのルールを明らかにしたい。
3. 結果と分析
3.1質的分析(仮説形成)
筆者は「環境ホテル あわてず打つ手は素早く」に読点を打つことにより、くぎり符号の使い方〔句読法〕(案)を参考にし、以下の仮説を立てた。
ア 強調を表すときにうつ。
(例1)人間の未来を脅かしそうな「環境ホルモン」の問題が、このところクローズアップされている。(1行目)
例2……40代前後の男性と比べると半分近いというショッキングな調査結果が、最近日本で示された。(4行目)
イ 動詞や形容詞、形容動詞などの連用形の後に打つ。文の中止を表す。
(例3)ごく微量でも生物の体内でホルモンのように働き、生殖や発育(中略)定着してしまった。(2行目)
分からないケースが多く、科学的解明が難しいのは当然だろう。(15行目)
ウ 「が」の後にうち、逆接或いは順接を表す。
(例)生殖や発育を妨げる科学物質は内分泌かく乱物質と呼ばれるが、日本では環境ホルモンの言葉が定着してしまった。(3行目)
メカニズムを解明する必要のに時間が必要だが、分かったことは速やかに……。(25行目)
エ 中川健次郎(1980)「叙述の主題を示す「は」「も」など(主語文節・主部)のあとにうつ。ただし、主語と述語が比較的隔たっているとき。」
(例)日本で環境ホルモンの生物への影響に確認されたのは、船底塗料中の有機ガスが原因で……。(13行目)
   ……人間にも影響を及ぼしつつあるという状況証拠は、世界で確実に増えている。(17行目)
オ 中川健次郎(1980)文の初めの接続詞や副詞の後、文中にあるときは、その前後にうつ。
(例)しかし、環境ホルモンの影響は長期的にみないと分からない……。(15行目)
   それでも、環境ホルモンが野生動物はもとより、精子減少や……(16行目)
   ……脳の発達や行動にも関係する可能性がある以上、深刻な問題と考えなければならない。(19行目)
カ 並列している語句のあとにうつ。
   科学技術庁は環境、農水、厚生、通産の各省庁や自治体、民間、企業などの協力で……。(22行目)
以上述べてきたように、合わせて六つの仮説を立てた。
 
3.2量的分析(仮説の検証または修正)
本稿では、早稲田大学173名の大学生を対象にし、「環境ホルモン あわてず打つ手は素早く」(『朝日新聞』1998年4月24日朝刊社説)に読点を打つというアンケート調査の結果と見てみよう。
まず、仮説アの「強調を表すときにうつ」は、例1の「人間の未来を脅かしそうな「環境ホルモン」の問題が、このところクローズアップされている」に読点を打った人は173人のうち104人、約60%を占めた。その一方、例2の「40代前後の男性と比べると半分近いというショッキングな調査結果が、最近日本で示された」(4行目)に読点をつけた人は僅かに35人であり、20%しかない。ここからみると、仮説アの「強調を表すときにうつ」は必ずテンをうつではなく、場合によって読点をつける。元々強調を表すときは人の理解によるものであるから。それに、仮説エの「叙述の主題を示す「は」「も」など(主語文節・主部)のあとにうつ」とは重なっている部分が感じ取れる。例1の「問題が」と「調査結果が」は主語文節或いは主部だと理解しかねない。そこで、仮説アを仮説オの一部として修正する。
また、仮説イ、ウ、エは半分以上の人も同じところに読点を打った。仮説イの例3と例4はそれぞれ129人と166人であり、仮説ウの例5と例6は165と163人、仮説エの例7と例8は166人と87人、いずれにしても過半数であるから、これらの決まりが実際にはよく守られているといっても過言ではない。
さらに、仮説オの「文の初めの接続詞や副詞の後、文中にあるときは、その前後にうつ」に関しては、挙げられたの三つの例、四つの読点がそれぞれ93人、59人、102人、135人である。まとめてみれば、その比率は約59%である。また、が文中に位置する「もとより」「以上」は、文の初めにある接続詞「しかし」「それでも」に比べると、より多くの人が読点をうったことが分かった。
最後に、原稿の中では「科学技術庁は環境、農水、厚生、通産の各省庁や自治体、民間、企業などの協力で……」(22行目)対等に並列している言葉の間に読点をつけた。しかし、173名の調査対象の中で、読点をうった人は僅かに8人と9人しかいない。このことから、仮説キの「並列している語句のあとにうつ」という決まり実際にはあまり守られていない。これと同様に、くぎり符号の使い方〔句読法〕(案)の第六条の原則として「語なり、意味なりが付着して、読み誤る恐れがある場合にうつ」と書いてあるが、原稿の「……40代前後の男性と比べると半分近いというショッキングな調査結果最近、日本で示された」(4行目)「最近」の後に読点をうった調査対象者はたった5人しかいない。
4. まとめ
仮説イの「動詞や形容詞、形容動詞などの連用形の後に打つ」、仮説ウの「「が」の後にうち、逆接或いは順接を表す」、仮説エの「叙述の主題を示す「は」「も」など(主語文節・主部)のあとにうつ」は大部分の人も読点をうったから、決まりとして定着していると考えられる。また、仮説アと仮説オを結合し、「文の初めの接続詞や副詞の後、文中にあるときは、その前後にうつ」の場合では、ほぼ過半数の人も読点をうったが、文中にある接続詞の後に読点をうった大学生は文の初めにある接続詞より多い。さらに、仮説カの「並列している語句のあとにうつ」は実際に意味さえ分かれば、読点をうたないことが普通である。
しかし、本稿ではアンケート調査内容の「環境ホルモン あわてず打つ手は素早く」は読点のすべての用法を包含するわけではないから、ほかの打ち方に言及することができなかった。例えば、「句読法」の中に書いている「数字の位取りにうつ」の原則。そこで、今後はより一層広い範囲で読点の打ち方を研究したい。


参考文献
http://www.asahi-net.or.jp/~mf4n-nmr/touten.html(読点の使い方)
閲覧日:2013年5月28日
中川健次郎(1980)「句読法の指導: 小・中・高校を通して」『国語教育研究』 (26下), 73-83
「句読法」(案)